中国市場の変化:日本ブランドが生き残るための新戦略

2025.03.26

2025年1月16日、ロイター通信は「Apple、24年の中国iPhone出荷17%減 シェア3位に転落」という記事を公開しました。本記事によると、Appleの2024年の中国での出荷台数は、2016年以降で最大の減少率を記録し、第4四半期には前年比25%減少しました。年間を通じて4四半期全てでマイナス成長となった一方、中国全体のスマートフォン出荷台数は前年比4%増加しています。ブランド別の市場シェアでは、Vivo(17%)、Huawei(16%)に続き、Appleは15%と3位に転落しました。中国の消費市場において、iPhoneの苦戦は氷山の一角に過ぎません。実際、多くの日本ブランドも同様の状況に置かれています。本コラムでは、現在の中国市場の動向を踏まえ、日本ブランドが苦戦している要因を分析します。

1. 消費市場は本当に大不況に陥っているのか
2025年1月17日、中国国家統計局が発表したデータによると、2024年の中国における国民一人当たりの可処分所得は3.47万元(前年比+5.1%)、一人当たりの消費支出は2.82万元(前年比+5.3%)でした。確かに、就職難やリストラなどのネガティブなニュースが多く報じられていますが、社会全体として経済が機能不全に陥るような深刻な不況には至っていません。

2. どのジャンルの商品が売られているか
全国消費分類を見てみると、下図のとおり、全体(一人当たりの消費支出+5.3%)と比べると、最大支出分野の食料品(たばこ、お酒を含む)は5.4%増で、ほぼ同率になりました。また、交通通信(+8.9%)、教育文化娯楽(+9.8%)は堅調でした。一方、衣料品、住居、生活用品とサービス、医療保健は、それぞれ+2.8%、+2.8%、+1.4%、+3.6%となり、支出を抑える状況となりました。原因は、交通通信の値上げ(高速鉄道運賃の価格体系の改定等)と消費志向の変化(教育文化娯楽にシフト)と考えられます。

出所:https://www.stats.gov.cn/sj/zxfb/202501/t20250117_1958325.html(中国国家統計局)

3. 海外ブランドが売れなくなるのか
海外ブランドの売れ行きは一概に低迷しているわけではなく、ブランドの戦略によって大きく異なります。かつて海外ブランドは「高品質」「中高所得者向け」といった差別化で成功してきました。しかし、近年の中国企業の技術力向上により、ローカルブランドが同等の品質を持つ製品を市場に投入し、シェアを奪いつつあります。

例えば、スマホ市場では、ローカルのHuaweiは、高価格帯の折り畳み式モデル(10,000元以上)から1,000元台の廉価モデルまで展開しています。それに対して、Appleは、最低スペックでも5,000元以上、モデルもほぼ同一で、市場ニーズに十分に対応できておらず、苦戦しています。

他方で、中国で成功する海外ブランドもあります。テスラ(NEV車)やユニクロ(衣料品)は依然好調です。テスラは中国政府の指針に合致するNEV車を開発するだけでなく、消費市場に合わせて、積極的に値下げや廉価モデルを提供することで、市場シェアを確保しています。ユニクロは、高品質を維持しつつ、ローカルブランドに負けない価格で市場展開し、成功しています。

中国市場の変化に素早く対応する戦略が成功のカギと言えます。

4. 中国で売れるようになるポイント
日本ブランドが中国市場で成功するためには、以下の3点が重要です。

① 事前に十分な市場調査を実施すること
近年、中国から撤退する日系企業が増えています。その多くは、進出時には市場調査を行ったものの、その後の市場変化をモニタリングせず、商品開発の遅れにより競争力を失ったことが原因と思われます。中国市場は日本と異なり、消費者の嗜好変化が激しく、商品のライフサイクルも短いため、継続的な市場調査が不可欠です。

② ローカルブランドとの競争意識を常に持つこと
中国ブランドの品質向上が進んでいるため、ローカル製品との競争意識を持つ必要があります。ローカルブランドは市場の変化に素早く対応するため、日本企業もそれに負けない商品開発・価格戦略を構築することが求められます。

③ 販売管理を徹底すること
代理店やパートナー企業との提携は重要ですが、単なる提携にとどまらず、日々の管理を徹底することが安定した販売につながります。加えて、近年、中国経済の成長鈍化に伴い、代理店の資金繰りが悪化し、支払い遅延や債権回収のトラブルが増えています。これを防ぐために、売上の回収期間の短縮する(例:3か月決済→1か月決済)、代理店の管理を信頼できる専門家に任せるといったことが有効です。

5. 結論と弊社の支援
近年、中国市場は大きく変化しており、日本ブランドが成功するためには、ローカルブランドとの競争に打ち勝つ必要があります。そのためには、中国市場に精通した専門家の助言を受けながら事業を展開することが不可欠です。弊社では、中国ビジネスに精通した中国弁護士、中国税理士、日本弁護士が中国に常駐し、中国市場開拓について包括的なサポートを提供します。

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