2025年中国市場の展望:企業が備えるべき変化と機会

2024.12.27

中国の消費市場とビジネス環境は大きな転換期を迎えています。これから日系企業は中国ビジネスでどう戦っていくべきか?本コラムでは、2024年を振り返りながら、2025年に日系企業が備えるべき戦略を解説します。

1. 2024年の振り返り
2024年の中国経済は、様々な課題に直面しています。肌感覚としては、経済全体の不振により消費市場が冷え込み、一般消費者の財布の紐が固くなり、外食業界やリアル店舗は厳しい状況にあります。一方で、EC市場は引き続き堅調に推移しています。貿易面では、米中貿易摩擦の影響もあり、全体的に厳しい環境が続いていますが、数値的には必ずしも悪化しているわけではありません。

1.1 外食とリアル店舗の現状
2024年の消費市場は明らかに低迷していました。まず、外食業界や衣料品、雑貨小物の販売は苦しい状況にあり、大型ショッピングセンターは空室率が高く、飲食店の出店と閉店が繰り返されています。

一方で、ECは引き続き好調を維持しています。今年、中国EC最大のイベント「ダブルイレブン」(10月14日~11月11日)では、各ECプラットフォームの総売上高が1兆4418億元に達し、前年比+26.6%という歴史的な販売記録を達成しました。その中でも、最大手のECプラットフォーム「タオバオ」は、同期間中に売上高が1億元を超えたブランド数が589となり、過去最高を記録しました。また、Douyin(中国版TikTok)や快手(Kuaishou)などのライブコマースプラットフォームも好調で、同期間中に3325億元(前年比+54.6%)の売上を記録しました。EC成長の背景には、物流の改善や支払いの利便性向上に加え、政府の補助金制度も大きな要因とされています。

1.2 中国ビジネス環境の悪化で、事業再編する企業が増加
中国全土で登記抹消される企業数が急増しています。中国日報によると、2023年には、全国で2,747万社が登記抹消され、前年比+41.04%という増加率を記録しました。これは、自社の経営不振やビジネス環境の変化、違法行為などが主な要因として挙げられます。
また、外資系企業の撤退が増加しているという報道もありますが、これは多くの企業が設立当初から大きく変化したビジネス環境の中で業務体制を維持することが困難となり、拠点の移転や他の拠点との合併など、事業再編が進められているためです。


1.3 米中貿易摩擦によって、中国の輸出入は厳しい状況に
近年、米中貿易摩擦は激化しており、特に米国のトランプ政権発足以降、中国製品への関税がさらに引き上げられるとの見方が強く、中国の輸出入は依然として厳しい環境が続くと予測されます。他方で、直近の貿易データを見ると、2024年(1~11月)の輸出は23.04兆人民元で前年比+6.7%、輸入は16.75兆人民元で前年比+2.4%となっており、決して悪い数字ではありません。

2. 2025年の市場展望

2.1 中国国内消費とビジネス環境の動き
まず、消費については、2024年はリアル消費が大きく落ち込み、消費者の支出が抑制される傾向にありました。消費者は、品質よりも価格を重視するようになっているため、外食よりも自炊、海外ブランド品よりも安価な国産品、リアル店舗よりもECを選ぶ動きが一層顕著になると予測されます。このような状況を受け、2024年下半期から、各地方政府は補助金政策を継続してきましたが、今後、更に強化する可能性が高いといえます。
次に、ビジネス環境については、採算が取れない企業の撤退や事業再編が進められると考えられます。特にローカル企業の中には、財政面で厳しい状況にある企業も多く、抜本的な構造改革が強いられるでしょう。その一つの契機として挙げられるのは輸出還付です。既に輸出還付制度の改定が進められていることから、還付に依存してきた企業(アルミ製品製造業、ソーラーパネル部品製造業など)は、事業の切り替えや縮小など大きな方向転換を強いられます。その結果、特に外資系企業にとって、これまで不公平とされてきた状況の緩和が期待されます。

2.2 輸出入貿易
2024年と比較して、最大の懸念は、米国のトランプ政権発足による米中貿易摩擦が中国の輸出入産業に与える影響です。特に、米国による中国製品への更なる関税引き上げは回避できない状況にあり、そのコスト増をいかに吸収するかが、中国の輸出入貿易産業に大きな影響を及ぼすと予想されます。

また、米中関係の動向は、日本企業の対中戦略にも大きく影響します。関係が改善すれば、対中投資は更なる拡大が見込まれる一方、改善が見られない場合、一部の製造機能を中国から東南アジアやインドなどに移転することも視野に入ってくるものと考えられます。

3. 結論
中国市場や消費者動向は、ここ数年で大きく変化しています。このように日々変化する中国市場に対応するため、日本企業は今後、柔軟に戦略を見直していく必要があります。例えば、既に中国に進出している企業は、競争力を維持するために、生産工場の集約や社内体制の効率化を図るなど、事業再編を積極的に進めることが求められるでしょう。また、自社製品の販路開拓を目指す企業は、従来の中国代理店に依存するというやり方ではなく、彼らと共にブランドに適した販促や価格設定を再考するなどして積極的に販売戦略に関与していくことが、成功の鍵となるでしょう。

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